Report市場調査レポート

タイにおけるM&A、JVの現状

公開日:2023年8月10日

 

ポイント

  • 外資企業からのタイ企業への M&A、ジョイントベンチャー件数は増加傾向。 
  • タイ市場の特徴に留意しつつ、自社の海外戦略に沿った能動的なアプローチが必要。

タイは充実したサプライチェーンとインフラにより、多くの日本企業にとって魅力的な市場となっています。既に数多くの日系企業がタイに進出をしていますが、今後の進出形態としてM&Aを活用することにより、更なる成長戦略を実現できる可能性があります。そこで今回はタイへの事業展開方法の一つであるM&Aについてお話します。

 

タイのM&A市場の概況

①タイM&A市場の現状

外資企業がタイ企業を対象としたM&A、ジョイントベンチャー(JV)の件数は、コロナ禍前の2019年には67件を記録し増加傾向にありました(図表1)。2020年はコロナの影響で一時的に件数は減少したものの、以降件数は戻ってきております。2020年以降の国別で見ると日本からの件数は全体件数の割合に比べて減少傾向にあり、中国・香港・シンガポール・マレーシアからの投資が増加傾向にあります。
業種別でみると様々な分野でM&Aが行われていますが、エネルギー、ヘルスケア、ロジスティックス、IT業種が比較的多く見受けられます。


出典:SPEEDA よりステータス「公表、完了」M&A「買収、JV」にて抽出し弊社にて作成

 

特徴

ここでは、弊社が日系・タイのM&A業界プレイヤーにヒアリングを行った、タイM&A市場の特徴について紹介させていただきます。

①中小企業M&A市場の未成熟

タイでも大企業を中心としたM&Aは多く行われていますが、中小企業のM&Aマーケットは未成熟であり、成長過程にあります。理由の一つに、タイは同族企業が多く、第三者に会社を売却することに対して抵抗感を持っているオーナーが多い傾向にあることが挙げられますまた、日本のように大規模なM&A仲介サイトが無く、中小企業向けにM&Aアドバイザリー業務を行うことができる会社も少ないことも理由に挙げられます。そのため仮にタイの中小企業オーナーが売却を検討したとしても、専門業者に相談するケースが少ないようです。つまり、日本企業を含む外資企業がタイ現地中小企業のM&A情報を入手することが難しい状況となっています。
一方で、買い手起点で、現地のオーナーへ話を持っていった際には、事業承継の問題などで会社売却に前向きな反応を示すタイ人オーナーもいます。待っていても良い案件が入ってくる機会は少なく、能動的なアプローチがタイでのM&Aを成功させる近道だと考えられます。

② 外資規制

タイでは外資規制が比較的厳しく、事業に応じて外国人がタイで一定の事業を営むことに制限を設けています。外国人が関与する企業の業種や規模によっては、特別な許可やライセンスが必要になる場合があります。
買収候補先の事業が外資規制の対象となるか否かの事前確認を行い、場合によっては外国人事業許可の取得や全株取得でなくJVを検討していく必要があります。

③ 二重帳簿・法令遵守

タイの中小企業では租税回避を目的とした二重帳簿を行っている企業が少なくありません。株式関係書類や許認可取得の不備など、必要な資料を備え付けていないなど現地法令に遵守していないケースも多く、デューデリジェンス(買収監査)の過程でうまく進まないことがあります。

まとめ

タイ市場は日本企業にとって成長の機会が豊富であり、M&Aを通した事業拡大も魅力的ではありますが、同時に上述した注意すべき課題もあります。
成長戦略として日本企業とタッグを求めるタイ企業も未だ多くあると感じます。マーケットの理解と適切な戦略立案を行い、買収先、合弁先探索の能動的なアプローチを行うことで、日本企業はタイのM&A、JVで成功を収めることができるでしょう。

 

CCイノベーションのコンサルティング

CCイノベーションでは、海外展開に向けたコンサルティングを提供しています。海外市場調査、海外展開に関する事業計画の策定、フィージビリティスタディの実施、お客様の要望に基づいた現地合弁企業先候補の個別リストアップ、アポイント取得、商談サポートなどを行っています。海外展開を検討しているお客様は是非一度お気軽にご相談ください。

 

※本情報は、当社が作成時に信頼できると思われる情報源に基づき作成したものですが、情報の正確性や完全性を保証するものではありません。お取引に関する最終ご判断はお客さまご自身でご判断いただき、必要な場合には顧問会計士や顧問弁護士などにご相談の上でお取扱いいただきますようお願い申し上げます。
本情報についてのご照会やコンサルティングのご相談につきましては、株式会社CCイノベーションまでお願い致します。

Contactお問い合わせ

お気軽にお問い合わせください

ページトップ