公開日:2022年8月10日
ポイント
- タイにおける日本食レストラン数は地方で増加傾向にあり、今後も地方を中心に増加が予想される。
- タイ人の日本食に対するマインドの変化によって、日本食レストランにも変化が求められる。
今回は、2022年6月より飲食店を含む娯楽施設が全面解禁となり、ポストコロナとして動き出しているタイの飲食店市場、その中でも日本食レストラン市場にスポットを当ててお話しします。
地方でのレストラン数の増加
JETROの調査によると、2021年のタイ国内の日本食レストランは、コロナ禍にもかかわらず、前年比6.7%増の4,370店舗となりました(図表1)。地域別で見るとバンコクは前年比1.5%減と減少しているのに対してバンコク以外の他県では15.5%増と、バンコク以外の地方での日本食レストランの増加が見て取れます。日本食が地方の人々にも馴染みの深いものになりつつあると考えられます。
ジャンル別に見る日本食レストランの動向
2021年時点の日本食レストランのジャンル別の割合では、寿司店の割合が27%と最も高く、次いで日本料理店、ラーメン店となっています(図表2)。また、前年比で店舗数増減率を見ると「寿司・日本料理・ラーメン・カフェ・洋食・カレー・オムライス」が増加している一方で、「蕎麦・うどん・鉄板焼き・お好み焼き」は減少しています。日本人の需要は一定数あるものの、タイ人の嗜好に合わないものは市場から撤退を余儀なくされているようです。
日本食の3つの多様化
タイの日本食では「価格の多様化」「ジャンルの多様化」「チャネルの多様化」の3つの多様化が進んでいます。
①「価格の多様化」
日本食レストランは比較的高価格帯のレストランが多かったものの、近年ではタイ人の一般層をターゲットとして低価格のレストランが増えています。一方で、タイ人の富裕層をターゲットとした超高価格帯のレストランも増えてきており、幅広い価格帯の日本食が点在している現状です。
②「ジャンルの多様化」
タイ人の日本への旅行者は多いため、寿司やラーメンだけではない多様な日本食に触れ合う機会が多くなりました。 その結果、主要なジャンル以外の日本食も徐々に認知度が増してきており、タイ国内にて日本食を取り扱う飲食企業が日本食好きのタイ人をターゲットとして、タイでまだ浸透していない新たな日本食を探す動きも見られます。
③「チャネルの多様化」
Don Don Donki(ドン・キホーテ)やサイアム高島屋などの日本食品の小売販売の増加、コロナ禍のデリバリー需要の増大による日本食のデリバリーの増加によって、レストランでの飲食だけでなく、自宅でも気軽に日本食を楽しめるようになっています。デリバリー専門のゴーストキッチンを設置する飲食企業も増えてきており、店内飲食だけに捉われない顧客へのアプローチ方法を検討することが必要です。
現地日本食レストランの声
現地で日本食レストランを経営するお客さまにヒアリングしたところ、「日本食においては、バンコク市内、特に日本人が多く住むエリアでは飽和状態が続いており、差別化が出来ていない飲食店は生き残りが難しい現状にある。価格帯も中途半端な層が一番厳しいと感じており、富裕層をターゲットとした高級路線か一般層をターゲットとした低価格路線の2極化に迫られるのではないか。」と話していました。 タイで飲食店を新規出店する際は、タイにおける日本食レストランの現状を理解したうえで、顧客ターゲットの明確化、ターゲット層に対する自社のブランディングなど様々な戦略を練っておくことが生き残りには不可欠だと言えるでしょう。
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