調査レポートREPORT
- 2026年06月29日
- コラム
【アフリカ日記vol.15】喧騒のケニアに広がる“静かな”EV —急速に進む変化
✓ ナイロビの街では「静かな乗り物」が増え始め、EV化が着実に進展
✓ アフリカのEV普及は環境政策ではなく、人々の所得向上につながる経済合理性が原動力
ケニア生活も2年が経過しましたが、最近ふとした変化に気づきます。
それは、街の中を走る乗り物が ”静か” になっていることです。
交通の混雑や騒がしさ自体は相変わらずですが、バイクや車の中に、音をほとんど立てない存在が混ざり始めています。
その正体が・・ “EV” です。
1.乗り物別のEV化の状況
■ バイク:生活の足から進む、最も進むEV化
・まず変化が最も目に見えるのが、バイクタクシー(通称:Boda)です。
・街中を縦横無尽に走り、荒さも含めてアフリカらしい存在ですが、最近は電動バイクを見かける機会が明らかに増えています。
・現在ケニアで普及しているEVの大半は二輪で、登録されるEVの9割以上を占めています。新車バイクにおけるEVシェアは、2021年の0.5%から2025年には約15%まで拡大しました。
・多くのEVバイクスタートアップが成長し、バッテリー交換モデルが主流になっています。さらにバイクタクシーライダー向けEVバイクの分割払いを支援する企業も増えており、「金融があるからEVが使える」という構造も出来上がっています。
・背景は極めてシンプルです。ドライバーは1日の売上の半分近くをガソリン代に使っていましたが、EV化することでコストは30〜50%程度まで低減します。つまりEVは「環境」ではなく、「収入改善」の手段として選ばれています。

■ バス:EVバススタートアップ「BasiGo」が広げる次のステージ
・次にバスです。ケニアでは依然乗り合いバス(通称:マタツ)が主流ですが、EVバススタートアップ「BasiGo」が電動バスの展開を進めています。以前のコラムで紹介した際には、まだ数える程度の普及台数でしたが、現在では100台超が運行され、発注待ちも1,000台を超えるなど、市場ニーズは急速に拡大しています。バスは走行距離やルートが固定されているため、EVとの相性が良い分野です。


■ 車:まだまだガソリンが主流、しかし変化の兆しあり
・一方で、四輪はまだまだガソリン車が主流です。充電インフラや価格の問題があり、普及には時間がかかる段階にあります。
・ただし、変化の兆しは確実に出てきています。代表例がHenreyです。中国発の小型EVで、ケニアではRideence Africaが展開し、ケニア国内での組立も始まっています。2026年には約150台規模の現地生産が進められ、その多くがタクシー用途です。すでにUberなどで利用され始めており、燃料コストは約80%の削減効果があります。
・ただ、バイクやバスのように一気に普及する段階ではなく、時間はまだまだかかると見られますが、アフリカでもEV四輪の可能性は着実に見え始めている・・そんな印象があります。

2.ケニアとEVの相性
・ケニアのEV化の背景にあるのが、国際的な原油価格の上昇や中東情勢の影響で、ケニアでもガソリン価格は約20%程度の値上がりしています。
・これに加えて、ケニア特有のエネルギー構造も大きな要因です。電力の約9割が地熱、水力などの再生可能エネルギーで賄われており、「ガソリン=輸入」、「電気=国内」という構図が成立しています。つまりEVは単なる乗り物ではなく、燃料輸入に依存しない「エネルギーの内製化」にもつながる存在です。
こうした背景から、ケニアのEV化はバイクからバスへと、生活に近い領域から着実に広がっています。
ナイロビの街は相変わらず渋滞し、喧騒に包まれています。しかし、その中を走る乗り物は少しずつ変わり始めています。
アフリカのEV化は、環境政策から始まったのではなく、「生活を良くするための経済合理性」から進んでいる・・その小さな変化が、街の音を少しずつ変え始めています。
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