Inspection Tour Report

海外視察レポート

地方創生とGXを考える欧州8日間
20241005
20241012
訪問先 サンセバスチャン(スペイン)、シュトゥットガルト(ドイツ)

「地方創生とGXを考える欧州8日間」と題し、環境先進国のドイツ(シュトゥットガルト)、そして観光先進国のスペイン(サンセバスチャン)を視察しました。
シュトゥットガルトは人口63万人、面積は207k㎡(金沢市の半分以下)の都市で、ベンツ、ポルシェ、ボッシュの本社のほか、シーメンス、コダック、レノボなども拠点を構えており、約1,500社の中小企業が集まる地域でもあります。
サンセバスチャンは人口18万人、面積は60k㎡の小さな都市です。ミシュラン星付きレストランが人口比で最も多い都市であり、美食のまちとして知られ、毎年世界中から観光客が訪れています。

ベンツ工場

シュトゥットガルト中心部から南西に約20km離れた、メルセデスベンツ・シンデルフィンゲン工場を訪問しました。メルセデスベンツ世界最大のこの工場では『Cクラス』、『Eクラス』、『Sクラス』のすべてを生産しています。
工場内には400台以上の部品搬送車(AGV)が動き回っており、従業員はタブレットを片手に完全ペーパーレスで作業していました。また工場ラインはゆったりと流れ、ライン横にはカフェスペースもあり、従業員の動きに慌ただしい感じはまったくありませんでした。
また、屋上には太陽光発電システムがあり、年間電力需要の約30%を賄い、残り70%も工場敷地内で自家発電(水力発電など)しているとのことです。すべての照明はLEDで、自然光も積極的に取り込むことで、快適な職場環境が整備されていました。




ポルシェ博物館

シュトゥットガルトにあるポルシェ博物館を訪問しました。この博物館は、ポルシェの歴史とその革新的な技術が展示されています。博物館の外観はモダンでスタイリッシュなデザインでした。
館内には、ポルシェの初期モデルから最新モデルまで、約80台の車両が展示されています。ポルシェ356やポルシェ911などのクラシックカーからレーシングカーの展示も充実しており、ポルシェがモータースポーツで果たしてきた役割を垣間見ることができました。
展示エリアはテーマごとに分かれており、ポルシェの技術革新やデザインの進化を時系列で追うことができます。また各展示には詳細な説明も添えられており、ポルシェの技術的な特徴や歴史的背景について深く学ぶことができました。




MHPアレーナ

ブンデスリーガ(ドイツプロサッカーリーグ)、VfBシュトゥットガルトvsホッフェンハイム戦を観戦した翌日に、試合会場であったMHPアレーナ(サッカースタジアム)の視察ツアーに参加しました。
同スタジアムはVfBシュトゥットガルトのホームスタジアムで、収容人数は6万人を誇ります。UEFA EURO 2024(ヨーロッパ各国のサッカー代表チームによって争われる大会)に向けて、2022年からメインスタンドの改修や施設内のインフラ、バリアフリー化などの工事が始まり、今年4月に竣工したばかりでとても綺麗なスタジアムでした。
またVfBシュトゥットガルトは地域に根差した運営を重視しており、地元企業や地域コミュニティとの連携を通して、地域経済の活性化につなげているそうです。今回の視察メンバーにはツエーゲン金沢のパートナー企業の方も多く参加しており、スポーツによる地域活性化の参考になったのではないでしょうか。




hy-fcell

 

水素と燃料電池技術に特化した国際的な展示会である「hy-fcell」を視察しました。会場には水素トラックを製造する企業、水素ステーションを展開する企業、水素製造装置や部品メーカーなど多くの企業が出展していました。
ドイツの主要都市では環境問題への対応として旧式の排ガス規制レベルにしか対応していないディーゼル車の走行が禁止されており、シュトゥットガルトもその対象です。一方でEV車についても充電インフラ不足や長距離運転の際の不便さなどからあまり普及しておらず、水素燃料車の普及で環境にやさしい移動手段が広がることが期待されています。
展示会では、最新の水素技術や製品が紹介されており、参加メンバーは水素エネルギーの現状や将来の展望、課題についても多くの知見を得る機会となりました。



アケラレ

スペインの美食の街、サンセバスチャンに移動し、ミシュラン三ツ星レストラン「アケラレ」でランチを楽しみました。スタッフの温かいおもてなし、洗練されたインテリア、ビスケ湾を見下ろす抜群のロケーション、創造的な料理すべてが感動でした。 食事の合間には、ソムリエが厳選したワインが提供され、料理とのペアリングも完璧で、各ワインの説明も丁寧に行われ、ワインの知識を深めることもできました。
最後に厨房と料理の研究室も見学させていただきました。
アケラレでのランチは、単なる食事ではなく、五感を満たす特別な体験で、忘れられないひとときを過ごすことができました。





サンセバスチャン市役所

アケラレでのランチを終え、サンセバスチャン市役所に向かい、職員と「まちづくり」に関する意見交換を行いました。
サンセバスチャンはミシュラン星付きレストランが人口に対して世界で最も多い都市の1つです。この成功の背景には、バスク地方のシェフたちが、レシピや技法を共有し、地域全体の料理レベルを向上させたことがあります。また、地元の食材を積極的に使用することで、一次産業を支えており、これにより美食を中心とした地域活性化につながっているそうです。
市としては、環境、経済、文化、教育、科学に力を入れていると話され、特に環境に関しては、持続可能な都市開発を進めるべく、公共交通機関の充実や自転車インフラの整備を実施するなどして、環境負荷を減らす取り組みを紹介いただきました。
また、まちづくりにおいては、地域の中小企業との連携が非常に重要で、同じ方向を向き、地域の伝統や文化を守りながら、新しい価値を創造しているそうです。




まとめ

今回視察した各都市の先進的な取り組みは、私たちの地域でも応用可能なアイデアが多く含まれており、今後の地域づくりに大いに参考になると感じました。
特に、再生可能エネルギーの利用促進や公共交通機関の充実などは、環境負荷を減らしながら地域の魅力を高める有効な手段です。また地域資源を活用したサーキュラーエコノミーの推進も、持続可能な地域づくりに欠かせない要素であると再認識できました。
今回の視察で得た知見をもとに、地域企業と自治体と連携し、持続可能な未来を目指すきっかけとなれば幸いです。



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