講義風景〈2025年10月31日(金)〉
CCIクラブの新たな取り組みとして「マーケティング分科会 ブランディング戦略コース」を新設し、全5回シリーズの記念すべき第1回目を開催しました。
講師には、株式会社Bimpactおよび株式会社SIMONE代表の足達則史先生をお招きしました。
テーマは「ブランディングによる事業・企業のファン創り 〜経営の安定と永続的な成長のために〜」。
実践的なブランディングの考え方と、数々の成功事例をご紹介いただきました。
足達先生は、トヨタやJALなど、誰もが知る企業のリブランディングにも携わってこられた方。
そのクリエイティブな手腕は広告界でも高く評価されています。
■「ブランドとは何か」から始まった90分講義の冒頭、足達先生はまず「ブランドとは何か?」という問いを投げかけられました。
ブランドがもたらす価値とは、単なるロゴや広告の印象ではなく、企業そのものの信頼と共感。
その価値が高まることで、利益率の向上や値引き圧力の回避につながり、ファンがファンを呼ぶ“好循環”が生まれるといいます。
この循環によって、ブランド資産が積み上がり、企業の基盤がより強固になる――
この考え方は、参加者の多くにとって大きな気づきになったようです。
■ブランディングは「投資」そのもの
特に印象的だったのは、ブランディングを“経費”ではなく“投資”として捉える視点です。
工場や設備にお金をかけるのと同じように、ブランドを育てることも企業の未来への投資。
ブランドは時間とともに企業価値として“ストック”され、やがて経営の安定と持続的成長を支える基盤になります。
足達先生は「ブランディングは経営者自らが関与すべき“経営マター”である」と強調。
その上で、「何を目指すのか」というゴール設定と、明確なプライオリティを持つことの重要性を語られました。
■これからの4回に向けて
今回の講義は、ブランディングを“広報活動”ではなく、“中長期の経営戦略”として再定義する時間となりました。
全5回の講座を通じて、参加者の皆さんが自社のブランドの可能性を再発見し、地域から“選ばれる企業”へと進化していくことを期待しています。
講義風景〈2025年11月7日(金)〉
第2回となる今回は、オンラインで開催しました。
日本の企業は技術力やサービス品質の向上に力を注ぐ一方で、顧客への価値発信や、製品・サービスの機能を超えた「意味づくり」が後回しになりがちです。
しかし、地域には優れた技術・歴史・文化を持つ中小企業が数多く存在します。
その魅力をブランディングによって“ストーリー”として再構築し、発信することで、国内外での再成長が十分に可能であることが示されました。
■ブランドとは何かブランドの語源は、カウボーイが自分の牛に焼印を押したことに由来します。
つまり、「他と差別化するための印」がブランドの原点です。
現代の企業におけるブランドも、単なるロゴやデザインではなく、企業が提供する体験や信頼の“総和”だといえます。
たとえばスターバックスのロゴを見れば、多くの人が「深煎りコーヒー」「心地よい香り」「温かい接客」といったイメージを思い浮かべます。
それは、企業が長年にわたり積み重ねてきたブランドの結果なのです。
■「価値」とは、顧客の心に生まれるもの
価値には、機能価値(性能や利便性)と、情緒・情報価値(体験や共感)があります。
ブランド価値とは、この機能価値に情緒・情報価値を掛け合わせ、顧客の「〇〇したい」という欲求へと変換する活動です。
人は理性的に判断しているようで、実際には直感的な脳のシステムによって意思決定しています。
だからこそ、ブランディングとは顧客の心の中の認識をめぐる戦いであり、「市場にどう入り込むか」ではなく、「人の心にどう入り込むか」を考える必要があるというメッセージが印象に残りました。
■コンタクトポイントの設計とターゲットの理解
ブランド体験は、顧客とのあらゆる接点(コンタクトポイント)でつくられます。
ストーリー、商品・サービス改良、価格設定、店舗、SNS、広告、PR、イベントなど、一つひとつの接点がブランド価値を形づくる要素です。
また、ブランディングの出発点は「誰に届けるのか」の明確化です。
ターゲットを年齢や性別といった属性だけでなく、価値観・行動・心理・ライフスタイルまで掘り下げ、ペルソナとして立体的に描くことで、より共感度の高いメッセージ設計が可能になります。
■次回に向けて
第2回では、ブランディングの考え方をより実務的なレベルに落とし込み、「誰に」「どんな価値を」「どう伝えるか」というマーケティングの核心に迫りました。
次回(第3回)は、各社のブランドナラティブ(ストーリー)を実際に形にしていくステップへと進みます。
全5回のコースを通じて、参加企業の皆さまが自社の魅力を再定義し、地域から“選ばれるブランド”として進化していくことを期待しています。
講義風景〈2025年11月14日(金)〉
■「自社の“違い”をどうつくるか?」第3回では、これまで学んできた基礎を踏まえ、
「訴求価値をどう創るか」
「ポジショニングをどう設計するか」
という “ブランドの核” に迫る内容を中心に取り上げました。
加えて今回は、事前ワークをもとにしたワークショップ形式も実施。
自社のブランド検討を実際に言語化し、足達先生から直接フィードバックをいただくことで、多くの学びが得られた回となりました。
■訴求価値の創造 〜心に残る“違い”をつくる〜
ブランドが選ばれるためには、
“優れている証明”ではなく “違いの設計” が必要であり、
そのための4つのアプローチをどう組み合わせるかが鍵であると紹介されました。
■ポジショニング戦略 〜どの土俵で戦うかを決める〜
後半は、ブランドの“立ち位置”を定義するポジショニングについて解説しました。
ベネフィット訴求、使用状況の特化、ユーザー像の再定義、既成概念の逆張りなど、7つの代表的なポジショニング手法が事例とともに紹介されました。
どの手法を選ぶにしても大切なのは、
ターゲットのインサイトと、自社の強みが交わる“独自のポジション”を定義すること
という考え方が強調されました。
■次回に向けて
今回は、ブランドの“独自価値”と“立ち位置”をどう設計するか、そしてそれを自社視点で深く考えるためのワークショップを通じて、理解が一段深まった回となりました。
次回は、今回のアウトプットをさらに発展させ、
ブランドナラティブ(徹底した顧客目線による価値ストーリー)の構築に進んでいきます。
全5回のコースを通じて、参加企業のみなさんが“選ばれるブランド”へと進化していく姿を楽しみにしています。
講義風景〈2025年11月28日(金)〉
■「ブランドは人格」――ファンの心を掴むコミュニケーション戦略の神髄第4回は、これまでの学びを踏まえ、
「ファンを創るための具体的なコミュニケーション戦略」 をテーマに開催しました。
参加者の皆さまも、自社の顧客接点を思い浮かべながら熱心に耳を傾けていました。
■ブランドは「一人の人間」である
講義の冒頭では、ブランドパーソナリティ(ブランドの人格) の重要性が紹介されました。
「もし、あなたのブランドが一人の人間だったら、どんな性格や態度、振る舞いをするでしょうか?」
――この問いが、ブランドの一貫性を生み出す出発点です。
人格を定義することで、WebサイトやSNS、店舗など
どの接点でも「同じ人が話している」と感じられるようになります。
また、コピーやデザインの判断基準が明確になり、
お客様が“人として共感できる” ブランドが形づくられます。
足達先生は、単なる形容詞で終わらせず、
「どう行動するか」まで落とし込むことが
“使えるブランドパーソナリティ”を生むと強調しました。
■企業と顧客が共に創る「ブランドバリューシェア」
次に取り上げられたのは、ブランドバリューシェア(価値共有)の考え方です。
これは、企業が一方的に発信するのではなく、顧客と共にブランド価値を形成していくというもの。
積極的な情報発信と、顧客による共感・共有の両輪が重要です。
購買行動が「AIDMA」から「AISAS」へと変化した今、
生活者は自ら検索(Search)し、共感すれば共有(Share)します。
だからこそ、企業は各接点で一貫したブランド体験を提供することが欠かせません。
Webサイト、SNS、店舗、製品パッケージ、営業担当者、従業員の態度など、
あらゆる顧客接点でブランドの人格を体現し、
その積み重ねによって顧客の心理は「認知」「関心」「検討」から
「購入」「体験」「愛着・推奨」へと段階的に深まっていきます。
■最終回に向けて
第4回は、ブランドを「人格」として捉え、
すべての接点でその“らしさ”を体現することの重要性を学ぶ回となりました。
次回は最終回。これまでの学びを総合し、ブランド構築の総仕上げへと進んでいきます。
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